第23回北海道小児健康フォーラムが終了いたしました

2022/11/1〜11/30の期間に動画によるオンデマンド配信で執り行いました。期間中に、多数の皆様のご視聴をいただきました。誠にありがとうございました。

来年度も多くの皆様に興味をもっていだけるテーマを、多くの皆様にご覧いただける形でお届けしたいと考えております。

 

期間中に配信内容にいただいた質問・ご意見に関し、講師からご回答させていただきます(質問の主旨はそのままに、個人情報部分は改変してあります)。

講演1:「こどもの腎臓病~じんぞうってどんな働きをしているの?~」

ご質問:
小学生の子ですが、毎年学校検尿で潜血プラスで引っかかっており、近所の病院を受診しています。病院でも潜血プラスとなっていますが、蛋白はでていないからと半年おきの検尿をするだけです。長期にわたって潜血で引っかかっていても腎臓に負担はかからないものなのでしょうか。このまま様子を見ていて大丈夫ですか。
ご質問
毎年学校検尿で、潜血でひっかかり、小児科受診、無症候性血尿と診断されている児童がいますが、そのまま経過観察でいいのでしょうか?

回答:
ご質問ありがとうございます。蛋白尿はなく、尿潜血のみ引っかかるということですね。特に身体的な症状はなく、尿潜血のみ引っかかる状態を「無症候性血尿(むしょうこうせいけつにょう)」といいます。

原因として主に考えられることは、①慢性糸球体腎炎のごく初期の状態、②腎炎ではなく体質的な血尿 ということになります。②であれば、基本的に腎機能が悪くなる可能性は低いです。

問題は①の方で、慢性糸球体腎炎であれば長い時間をかけて徐々に病状が進行し、放置していると腎機能が悪くなってしまいます。①を適切にみつけることが重要になります。

①でも②でも、初期症状はどちらも血尿のみであり、尿検査だけで区別することができません。①②の判別をつけるためには、講演の中でも少しお話した、『腎生検』という検査を行う必要があります。ただ、腎生検は腎臓を直接針で刺して腎臓を小さくくり抜いて調べるので、簡単にできる検査ではなく、出血などの危険性も伴います。

そこでどういったタイミングで腎生検を行うかというところがポイントになりますが、①であれば病状が進行してくると徐々に蛋白尿が出てくるようになります。②であれば蛋白尿が出てくることは少ないです。以上から、基本的には『蛋白尿が持続する場合』に腎生検を考えます。

また、もし①の慢性糸球体腎炎だったとして、血尿のみで経過するごく初期の状態で腎炎の診断がついたとしても、病気の勢いが軽く治療の対象にならないことが多いです。つまり、血尿だけの状態で軽い腎炎を診断しても、その時点では治療せず様子をみる→進行して蛋白尿が出てくるようになったらもう一度腎生検を行い、結果をみて治療が必要かを検討する ということになってしまいます。危険性のある検査を複数回しなくてはならなくなってしまうので、腎生検に関しては「早く診断をはっきりさせる」ことよりも、「治療が必要な病気を良いタイミングでみつける」という考えです。

質問者様の状況は、血尿のみですので、尿検査で様子をみていくのは妥当な判断だと思います。血尿のみで蛋白尿が無いのであれば、腎臓に負担がかかっているとはとらえなくて良いと考えます。ただし、今後蛋白尿が出て続くようであれば腎炎の可能性をより疑わなければなりませんので、定期的な尿検査はぜひ続けてください。もし蛋白尿が出てくるようであれば、腎臓専門医の診療が必要かもしれませんので、主治医の先生とご相談ください。

佐藤雅之

 

講演2:「てんかんでも安心して成⻑していくために大切なこと」

ご質問
てんかんをお持ちの児童の保護者に、発作が起きたらすぐ救急車を呼んでほしいと言われたことがありますが、5分様子を見ずにすぐ救急車を呼んだ方がいい場合はどんな場合でしょうか?

回答
ご質問をありがとうございます。発作が生じたらすぐに救急車を呼ぶ必要のあるてんかん患者さんは多くはないと考えますが、個々の患者さんによって、特別な配慮が必要な場合があると思われます。そのような場合には、保護者の方にその配慮が必要な理由や、病院からの説明をもう少しくわしく聞いてみるのがよいと考えます。普段から事前に情報交換をしておくことが、発作時に適切な対応をするために必要ですので、保護者の方にも理解して頂けると思います。

ご質問
発作とチックの違いについて、詳しく知りたいです。市内の小児科医でも検査で識別できるものなのでしょうか? 特徴的なこと etc.

回答
ご質問をありがとうございます。チックはまばたきや首を振る、肩をすくめるなどの「運動チック」と、せき払いや鼻をならす、などの「音声チック」があります。また、素早くて単純な「単純チック」と、持続がやや長く、意味があるように見える「複雑チック」に分けられます。

チックの特徴として、(1)意思に関係なく勝手に動いてしまう不随意運動とされていますが、一時的に自らの意思で抑制できること、が挙げられます。チックの前に前駆衝動と呼ばれる「ムズムズする感覚」や、「チックをしたくなる感じ」が生じる場合もあります。(2)生じる部位や種類、頻度が経過中に変化したり、症状が軽くなったり重くなったりします。不安や緊張が強まるとチックが出やすくなる一方、何かに集中している時にはチックが出にくくなることもあります。

てんかん発作の中で、両上肢、あるいは全身がピクッと動くミオクロニー発作が単純チックに似ていると思われます。しかし、チックは頻度が多いため、ミオクロニー発作に比べ、診察室で比較的確認しやすい特徴があると思います。また、ミオクロニー発作は自分の意思で抑制することはできません。一瞬の筋肉の収縮なので、匂いを嗅ぐ動きなど、複雑チックのような症状が生じることもありません。

上記(1)、(2)のようなチックの特徴を把握することは、てんかんとチックを鑑別する上で役立つと思われます。

田中亮介