赤羽裕一先生の論文が、Frontiers in Cell and Developmental Biologyに掲載されました!

赤羽裕一先生の論文が、国際学術雑誌 Frontiers in Cell and Developmental Biology誌に掲載されました。
この研究成果は、令和5年3月14日に各報道機関にプレスリリースされ、大学ホームページにも掲載されました。

国立大学法人 旭川医科大学

 

動物種特異的非翻訳RNAmiR-514aの神経発達促進作用の発見

ヒトiPS細胞由来神経細胞を用いた解析―

 

Akaba Y, Takahashi S, Suzuki K, Kosaki K, Tsujimura K.
miR-514a promotes neuronal development in human iPSC-derived neurons.
Frontiers in Cell and Developmental Biology 2023; 11: 1096463.
doi: 10.3389/fcell.2023.1096463 (IF 6.081)

 

論文の要旨】 

タンパク質をコードしない非翻訳RNAの一種であるマイクロRNA (miRNA)は特定の遺伝子のメッセンジャーRNA (mRNA)に相補的に結合し、遺伝子発現を調節することで様々な生物学的プロセスに関与しています。miR-514aは高度な知能や社会性を有する動物で保存されているmiRNAであり、霊長類、特にヒトやチンパンジーにおいてコピー数の重複が確認されています。しかし、中枢神経系における役割は未解明のままでした。そこで研究グループは、miR-514aの神経細胞における機能解析を行いました。

miR-514はマウスなどの齧歯類ゲノムには存在しないため、健常者由来ヒトiPS細胞を神経細胞に分化誘導し、機能解析に用いました。miR-514aの過剰発現はiPS細胞から神経細胞への分化を促進し、神経突起形成・細胞体サイズ・mTORシグナル活性を亢進させることを発見しました(図1)。逆にmiR-514aの機能を阻害すると、これらの効果は消失し、神経発達は抑制されることを確認しました。さらに霊長類の進化の過程で保存された領域の変異体を用いた実験では、miR-514aの配列変化が成熟型miRNAの発現を減少させることも見出しました。これらの結果は、miR-514aが神経発達・高次脳機能発現に重要な役割を持つことを示唆しています。

神経発達症を呈する未診断疾患の患者さんにおいて、タンパク質をコードする遺伝子の網羅的解析(全エキソーム解析)を行っても、診断が確定するのは半数以下にとどまっています。今回の研究成果は、神経発達症の病態にmiRNAが関与している可能性を示すものであり、その病態解明や治療法開発に向けては、タンパク質をコードしないmiRNAを標的とする新しい展開が期待されます。

図1 miR-514aの神経発達促進効果. ヒトiPS細胞由来神経細胞にmiR514aを過剰発現させると神経突起伸長が促進される(右)。

 

【概要図】