出張旅日記:標茶編-思い出いろいろ

旭川から約270kmの距離にある道東の町、標茶(しべちゃ)町。人口約7500人の町にある標茶町立病院も、私たちの出張先の一つです。かつては旭川空港から釧路空港まで定期便が就航していましたが、運休となった2008年からはJR石北線の美幌駅で降り、そこからお迎えのタクシーでの移動です。それなりの長距離移動なのでそれなりに疲れるのですが、それなりの楽しみもあります。

夕方、旭川を出発。これは2月の出張の際に撮影した一枚ですが、夕陽を浴びた旭川駅が旅情を誘います。

17時5分発の特急大雪に乗車。現役最古参の特急車両「キハ183系」は、なんと1986年(昭和61年)に運用開始だそうです。こういう写真を撮っていると、ちょっとした“撮り鉄”気分になります。

移動中、旭川駅前イオンで購入した夕食とビールでお腹を満たします。この後は仕事0.5、読書1.5、音楽鑑賞3、寝る5ぐらいの割合で、3時間ちょっとの時間を過ごします。ちなみに途中でエゾシカと衝突して、3時間ちょっとが3時間だいぶに変わってしまうこともしばしばです…。

美幌駅で降り、雪の中を網走に向かって走り去る特急大雪をお見送り。なんとも風情のある光景ですね。この時の私、気分は映画「駅 STATION」の中の高倉健、そして頭の中では八代亜紀の「舟唄」が流れています。
ここからタクシーに揺られて更に1時間半。標茶に到着すると病院職員住宅の一室が準備されており、ひとっ風呂浴びて、ビールをもう一杯飲んだら就寝です。実は私、標茶町出身の方との甘くてホロ苦い学生時代の思い出があるんですが、標茶出張に行くと時々その頃の記憶が蘇ってきます。あの人、今頃どうしてるかなあ…。

さて翌日、病院での業務は午前中の一般外来と、午後の予防接種外来です。かつて分娩を取り扱っていた頃には病棟での新生児診察もありましたが、今はなくなってしまいました。外来患者さんの数も決して多くはありませんが、それでも私たちを頼って受診してくれる患者さん達がいる以上、小児科医としてしっかり診療しなければと思うのです。

さてそんなこんなで診療時間が終わり、夕方帰路に就きます。美幌に向かうタクシーから見える景色、北海道らしさが感じられて、私は好きです。

4月、まだ湖面が凍る屈斜路湖。美幌峠からの一枚です。大学生の時に友人達と出かけた道東旅行で初めて見たこの景色。ここを通る度に、若くて無責任で楽しかったあの頃のことを思い出します。もう戻れない、青春の日々よ…。

さて。
実は今回紹介した標茶出張、私の先輩にあたる小児科医師が昨年度常勤医として赴任したのを機に終了する予定でした。ところが赴任後程なくして、その先生は急逝してしまったのです。本当に、本当に、突然のことでした。その日から、明日でちょうど一年になります。

あれからもう一年、あれからまだ一年。

標茶町の朝。出勤途中に空を眺めていると、ふとその先生のことを思い出します。釣りに連れて行ってくれたこと、一緒に野球をしたこと、教えてもらった医師としての在り方、そして何より、優しかったあの笑顔。
今も遠い空の上から、私達のことを変わらぬ笑顔で見守ってくれているだろうか。