呼び出し

-深夜2時過ぎ。スマホの呼び出し音で、私は浅い眠りから現実の世界に引き戻される。この呼び出し音は、“普段使わない方”のスマホの音だ。こんな時間に一体何があったのだろう?胸騒ぎの中、私は電話に出る。
「もしもし」。聞き慣れた女性の声だ。彼女と知り合って、もう3年になる。しかし電話の向こうから聞こえてきた彼女の声に、いつもの明るさはない。私は言いようのない不安を覚えながら、次の言葉を待つ。
「先生、生まれた赤ちゃんの泣きが弱いので、すぐ来て下さい!」-

素人小説のような出だしにドキドキした方がいるかどうかは分かりませんが、お届けしたのはある日の当直中の一コマ、病棟勤務3年目の助産師さんからの呼び出しでした…。

ということで、私たちは当直中に限らず病棟、外来、医局などからしばしば呼び出されます。で、現在呼び出しに使われているのがドクター用スマートフォン、略してドクタースマホ。

左が“普段使う方”の個人用。そして右が“普段使わない方”の当直用。当直中はこの2台を持ち歩いて各部署からの呼び出しに備えています。

ちなみに、少し前まで呼び出しに使われていたのがPHS、略してピッチ。

2021年1月をもって、一般向けサービスが終了してしまいました。今や「ピッチ」という単語が通じない方達もいるんでしょうね。でも、院内呼び出し用としてピッチを使っている病院は今もまだ多いようです。

そして、さらに以前の呼び出しに使われていたのがポケットベル、略してポケベル。

バブルの時代に一世を風靡したポケベルですが、こちらもすでに一般向けサービスが終了しており、病院の呼び出し用としてお目にかかることもほとんどありません。
当時、大抵の病院で院内呼び出し用と、院外呼び出し用の2つのポケベルを持たされていました。で、ポケベルが鳴ると、最寄りの電話を使って画面に表示された発信元に連絡するという流れなんですが、まだ携帯電話なんて普及していない時代、外出先からは公衆電話を使っての連絡でした。ですので当時の私の財布の中にはテレフォンカードが常備され、頭の中には公衆電話の設置場所と勤務先の電話番号がインプットされていたのでした。
「何言ってるのか意味分かんないですけど」って方もいらっしゃるでしょうかね。今から約20年前、ノストラダムスの大予言が見事に外れ、人々が新しいミレニアムの幕開けに心躍らせていた頃のお話です。

そういえば、ポケベルすらなかったかつての大学病院では、院外呼び出しは自宅の固定電話のみで、外出中は連絡の取りようがありませんでした。そして院内呼び出しは、その先生がいそうな場所に片っ端から電話をかけるというローラー作戦。医局、病棟、外来、果ては食堂や喫茶室まで、ありとあらゆる所に電話をかけて、それでもダメなら全館放送での呼び出しでした。当時は院内に「小児科の〇〇先生、至急病棟までご連絡下さい」みたいな放送が時々かかっていましたが、あれって呼び出される方は自分の名前が全館に響き渡って恥ずかしかったんですよね。
それに引き替え、今は便利になりました。いつでもどこでもスマートに呼び出し可能です。

そんなスマホ呼び出し時代に生きる私の最近の悩み。

電話に出ようとしても、時々応答のスライドが反応してくれないこと。
これは加齢に伴う皮膚乾燥のせいではなく、コロナ禍で増えた手指消毒機会のせいだと思いたい…。

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