鞆の浦ひとり旅:後編

今回の独り言も、引き続き生まれ故郷のともの浦を巡るひとり旅。
前編の最後に末吉のおみくじをツモって、ちょっと意気消沈した私。少し疲れてきたし、そろそろ帰ろうかなあと沼名前神社を後にします。

ちなみにこの神社には鳥衾とりぶすま型鳥居と呼ばれる珍しい鳥居があり、広島県指定重要文化財だそうです。

そしてこの鳥居の近くにあるのが、森下仁丹の創業者である森下博氏の銅像。子供の頃、銅像の柵から落ちないで誰が一番早く一周できるかという遊び(?)に夢中になっていたことを思い出します。一体何が楽しかったのやら。そして約40年の時が過ぎ、柵の上でバランス取っていた少年はすっかり中年になり、そして所属する新生児グループが森下仁丹から研究費を獲得することになるのです。本当に人生はどこで何が繋がっているのか分からない。そんな感慨に耽りながら、神社を後にして港に向かいます。

江戸や明治の頃と変わらない街並み。その時代にタイムスリップした感覚に陥ります。

街中どこにでもある路地ですが、実に趣があります。そしてこの細い路地を抜けると、

港が目の前に広がります。色々なことを考えながらここまで歩く間に、神社でツモった末吉のことなんてきれいに忘れ、すっかり気持ちも晴れました。よし、もうちょっとひとり旅を続けよう。

港をぐるっと周り、以前灯台のあった波止場に向かいます。

波止場からは港を反対側から見る格好になります。沖から帰ってきた漁船を常夜燈が出迎えます。

左に目を向けると、ちょうど生家の辺りが見えます。映画「崖の上のポニョ」の舞台でもある鞆の浦。この景色に似たような場面が映画にも出てきます。

外海を見ると、昔よく遊びに行った仙酔島が見えます。渡船に乗って島まで行きたかったのですが、さすがに時間がありません。それでも十分故郷を満喫した私は、この後帰路につきます。

そして、旅の最後にちょっと遠回りして向かったのは、鞆の浦を一望できる福山グリーンライン。

さっきまでいた鞆の街が随分遠くに感じます。瀬戸内海の島々、そして遠く四国までもがきれいに見渡せます。

道路の反対側にある展望台からは、傾き始めた太陽の光を浴びる内海大橋が見えました。

しばし景色を堪能し、ついでにこの後市内のショッピングモール内にあるカープグッズ売り場を物色し、大満足の私が家に帰ると、「ちょっとあんた、こんな遅い時間まで何をしょうたん?」と母が少々ご立腹の様子。そういえば、車で夕食の買い物に連れていくという約束をすっかり忘れていました…。

沼名前神社で私が引いたおみくじの、待人はおそいけれど来る、とは、母へのお告げだったのかもしれません。そして、争事は手間どり難しい、のお告げ通り、母の機嫌が直るのには少々時間がかかってしまったのでした。
この歳になってもまだまだ親不孝な私を、どうかお許し下さい…。