先輩達の声:若手〜中堅医師

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(2018年卒業)
(2017年卒業)
(2017年卒業)

齊藤 翔真

卒業年 平成30(2018年)

 

これまでの経歴

2018年 旭川厚生病院 初期研修
2020年 広域紋別病院小児科 後期研修1年目
2021年 旭川厚生病院小児科 後期研修2年目
2022年 旭川医科大学病院/名寄市立総合病院小児科 後期研修3年目
2023年 名寄市立総合病院小児科 小児科専門医取得、
内分泌・糖尿病グループ所属を表明
2024年 遠軽厚生病院小児科
2025年 旭川医科大学病院小児科 内分泌グループ

 

Q&A

Q1: そもそも、小児科において「サブスペシャリティを選択する」とは何ですか?

医師としての進路選択にも関わるため、一人ひとり、捉え方が異なると思われます。
ここでは、私個人の認識を述べさせていただきます。

私たちのスペシャリティは「小児科」であり、その基本的な診療スキルを後期研修医の3年間で習得します。
その後は、各人が専門領域をサブスペシャリティとして探求していくことになります。
前提として、旭川医科大学小児科には「感染・免疫・腎臓」「血液・腫瘍」「神経」「新生児」「循環器」「内分泌・糖尿病」という6領域の専門グループがあります。
後期研修医以降は、大学に勤務していれば、いずれかのグループに所属することになります。
「サブスペシャリティを選択する」というのは、大学勤務においては、所属する専門グループを決め、その領域の患者さんを中心に診療して専門知識を深めていくイメージです。
同時に、大学では研究に取り組む機会も多いかと思います(もちろん、関連病院でも学会や論文発表は十分に可能です)。

関連病院に勤務されている先輩方の中には、専門グループへの所属を表明していない先生もいらっしゃいます。
小児科医として専門性を深める方法は、人それぞれではないかと思っています。

 

Q2: サブスペシャリティを選択すると何が変わるのですか?

表明することで、まず自らの意識が変わったと感じています。
専門知識を得るために主体的に学習や経験の場を得ようとするようになりました。
また、同じ領域の先輩医師からのアドバイスやご指導をいただく機会も自然と増えました。
いずれは専門家として周囲から信頼を得て、色々とご相談していただけるように、レベルアップを目指しています。

実務面では、大学では専門グループごとに、その領域の症例を診療するのが原則です(例えば、内分泌・糖尿病グループが1型糖尿病を診療するように)。
一方で、各関連病院においてそのような区別は原則なく、様々な症例の診療にあたります。

 

Q3: それでは、関連病院で勤務する際には「サブスペシャリティ」は無関係なのですか?

決してそうではなく、関連病院においても専門性を持った医師が中心に診療にあたるケースは多々あります。
おおよそのイメージとして、各領域を得意とする医師がバランスよく勤務し、それぞれが得意分野の経験を活かしつつ、チームで診療するイメージです。

 

Q4: サブスペシャリティを選択すると、特別な資格を取れるのですか?

必ずというわけではありませんが、小児科専門医の他に、各専門領域の専門医資格を取得できることもあります。
しかし、小児科医として働くうえで必須というわけでもないと認識しています(個人的な認識です)。
サブスペシャリティを選択することで、その道の先輩方の指導を手厚く受けたり、学会に行けたり、大学勤務において希少疾患の診療や研究にあたる機会が増えたりすることはあるでしょうが、それだけが研鑽を積むルートではないとも感じています。

 

Q5: それでは改めて、齊藤先生はなぜ内分泌・糖尿病グループを選択したのですか?

ひとつには、診断・治療について未解決の希少疾患があり、その研究を継続したかったからです。
後期研修のローテーション中にこの疾患を有する児の診療に関わらせていただき、学会や論文発表を通して、現在のグループを選択するに至りました。
また、内分泌・糖尿病グループは、急性期の患者さんもおられますが、基本的にじっくりと時間をかけて精査・治療戦略を考えることが多く、自分の性格に合っている気がしました。

 

Q6: ひとつのサブスペシャリティ(所属グループ)を選ぶことに迷いは?

大いにありました。
小児科医として学びたいことは他のグループにもあり、「ひとつを選択する」ことへの迷いと違和感がありましたし、それは今も変わりません。
幸い、旭川医大の小児科は、グループ間のコミュニケーションが活発ですので、学びたい意思があれば大学でも、関連病院でも、サブスペシャリティとは無関係に経験を積めると思っています。

 

Q7: 専門領域を決めたばかりですが、数年後の展望はありますか?

まだ具体的にはありません。
ぼんやりと、まずは現在の所属グループにおける専門性を身につけたいと思っています。
専門医資格を取得したいというのではなく、例えば、「少なくとも小児糖尿病の診断・治療は独り立ちする」とか、「後輩の論文指導ができるようになる」とかも含めて、実質的な意味においてです。

 

Q8: 小児科入局や、サブスペシャリティ選択に迷っている後輩たちにメッセージは?

個人的には、選択するかどうかも含め、決して道は一つではないと思っています。
若手のうちに、そういった漠然とした思いを相談する機会があまりないことが、実は課題なのでは?とも思っています。
どんな成長のルートがあるのか、若手が主体となって一緒に考えてみませんか?

 

 

津田 淳希

卒業年 平成29(2017年)

 

これまでの経歴

2017年 旭川医科大学 初期研修
2018年 旭川厚生病院・旭川医科大学 初期研修
2019年 旭川厚生病院小児科 後期研修1年目
2020年 市立稚内病院小児科 後期研修2年目
2021年 旭川医科大学/名寄市立総合病院小児科 後期研修3年目
2022年 旭川厚生病院小児科
2023年 旭川厚生病院小児科 小児科専門医取得 感染・免疫・腎臓グループ所属を表明
2024年 旭川医科大学小児科 感染・免疫・腎臓グループ

 

Q&A

Q1: そもそも、小児科において「サブスペシャリティを選択する」とは何ですか?

僕の理解では、小児科医としての専門性をさらに深めていくための「自分の専門分野を定める」ということだと思っています。

多くの場合、皆さんがこれから経験するかもしれない大学病院では、専攻医修了後に「感染・免疫・腎臓」「血液・腫瘍」「神経」「新生児」「循環器」「内分泌・糖尿病」などの専門グループのいずれかに所属し、その分野をより深く学んでいくことになります。

もちろん、関連病院では引き続きジェネラルな小児科診療が中心になることが多いですが、この選択が将来の専門性を形作る第一歩になると考えています。

 

Q2: サブスペシャリティを選択すると何が変わるのですか?

大学病院での勤務がメインになる場合、所属する専門グループの疾患をより深く、集中的に診療したり、関連する研究活動に関わったりする機会が増えます。

僕自身、今のグループに所属してまだ日は浅いですが、自分の興味のある分野に特化して勉強できるので、知識も深まりますし、何より「もっと知りたい!」というモチベーションが以前にも増して高まっているのを感じています。
新しい発見の連続で、とても充実しています。

 

Q3: 関連病院で勤務する際には「サブスペシャリティ」は無関係なのですか?

そんなことは全くありません。
むしろ、関連病院でも自分のサブスペシャリティは活きてくると思います。

例えば、専門外来の担当や、自分の専門領域に関連する疾患の患者さんが来られた際には、中心となって診療計画を立てたり、他の先生からのコンサルトを受けたりする機会が増えると思います。

川崎病の患者さんなら循環器グループの先生、けいれんが止まらない急性脳症の疑いなら神経グループの先生が関わるように、それぞれの専門性を活かしてチーム医療に貢献することになります。
自分の専門分野があることで、より自信を持って診療にあたれるようになりますし、他の医師にとっても頼れる存在になれるはずです。

 

Q4: サブスペシャリティを選択すると、特別な資格を取れるのですか?

各専門領域に関連した学会が認定する「認定医」や「専門医・指導医」といった資格取得を目指せるようになります。これはキャリアアップの一つの目標にもなると思います。

ただ、誤解しないでほしいのは、選択したサブスペシャリティ以外の分野の資格が全く取れなくなるわけではないということです。
例えば、小児科専門医を持っていれば、他の関連領域の講習を受けて取得できる資格もあります。
ですので、「このサブスペを選んだら、この資格しか取れない!」と視野を狭めすぎる必要はないと思います。
興味のある分野の資格については、先輩医師や指導医に積極的に情報収集してみるのが良いでしょう。

 

Q5: それでは改めて、津田先生はなぜ感染・免疫・腎臓グループを選択したのですか?

僕の場合は、いくつかの理由が重なりました。一つは、もともと消化器分野にも興味があったこと。
そして、研修医時代に関連病院で診療する中で、年々急速に増加している炎症性腸疾患(IBD)など、専門的な知識が必要な消化器疾患を診られる先生が、当医局関連病院では実はそれほど多くないと感じた経験も大きかったです。

僕が所属している「感染・免疫・腎臓グループ」は、その名の通り感染症、免疫疾患、腎疾患が中心ですが、IBDのような自己免疫が関わる消化器疾患も幅広く診療する機会が多いです。
それが自分の興味や問題意識とマッチした、という感じです。

 

Q6: ひとつのサブスペシャリティ(所属グループ)を選ぶことに迷いは?

正直、ものすごく迷いました。
どのグループも魅力的で、それぞれの分野にやりがいがあるのは分かっていたので、なかなか一つに絞りきれませんでした。

専攻医期間が終わり、専門医も取得して、いよいよ大学に戻ってグループを決めなきゃいけない時期が迫ってくると、「どうしよう、まだ決まってない…」と焦りを感じたこともありました。
興味のあるグループの先輩や、他のグループの先生方にもご相談させてもらい、色々な視点からのアドバイスをいただく中で、最終的には「これだ!」と納得のいく選択ができたと思っています。

 

Q7: 専門領域を決めたばかりですが、数年後の展望はありますか?

まだ具体的な計画を立てているわけではありませんが、まずは今の専門分野、特に炎症性腸疾患などの消化器領域で、「この先生に任せれば大丈夫」と周囲から信頼されるような、いわゆる「一人前」の医師になりたいと思っています。

将来的には、日々の診療だけでなく、臨床研究や基礎研究といったアカデミックな分野でも、何か新しい発見や治療法の開発に貢献できるような実力を身につけていきたいです。
道のりは長いですが、一歩一歩進んでいきたいです。

 

Q8: 小児科入局や、サブスペシャリティ選択に迷っている後輩たちにメッセージは?

入局先を選ぶ際には、もちろん医局の雰囲気や教育体制も大切ですが、「将来、どんな人たちと一緒に働きたいか」「どのように子どもたちやご家族と関わっていきたいか」という視点も重要かもしれません。
扱う疾患だけでなく、その先にある患者さんやご家族の笑顔を想像してみるのも良いと思います。

サブスペシャリティの選択については、焦って結論を出す必要は全くないと思います。
僕自身もそうでしたが、日々の診療の中で「この疾患をもっと深く知りたい」「この先生みたいになりたい」と思えるような、運命的な出会いや心に残る経験がきっと出てくるはずです。

もし気になる分野やグループがあれば、まずはそのグループの先生方に話を聞いてみてください。
そして、じっくり時間をかけて、自分が本当にやりたいこと、情熱を注げることを見つけてほしいなと思います。

 

 

芳賀 俊介

卒業年 平成29(2017年)

 

これまでの経歴

2017年 旭川医科大学 初期研修
2018年 富良野協会病院 初期研修
2019年 旭川厚生病院小児科 後期研修1年目
2020年 遠軽厚生病院小児科 後期研修2年目
2021年 旭川医科大学/富良野協会病院小児科 後期研修3年目 神経グループ所属を表明
2022年 旭川厚生病院小児科
2023年 北海道立旭川子ども総合療育センター小児科 小児科専門医取得
2025年 旭川医科大学小児科 神経グループ

 

Q&A

Q1: サブスペシャリティを決めた経緯

私の関心は、長年にわたり「命」と「脳」に向けられてきました。
命に関心を持つようになった原点を振り返ると、小学生の頃に読んだ、手塚治虫作『ブッダ』第1巻に登場するウサギの話が強く印象に残っています。話の内容自体はシンプルですが、幼心に大きな衝撃を受け、それ以来、「命とは何か」という問いを持ち続けるきっかけになったと感じています。

一方、脳については、旭川医大に編入する前の大学時代に、養老孟司著『唯脳論』に出会ったことが出発点でした。
意識、運動、学習、記憶、睡眠、夢、そして「心」といった脳の不思議さに惹かれ、それらがいつ、どのように生まれ発達するのかを考えることが、今もなお私の大きな興味です。
そして小児科を選んだことで、「脳」×「小児」=「小児神経」という道が、ごく自然にサブスペシャリティとして定まりました。

 

Q2: サブスペシャリティを決めたことで得られたこと

サブスペシャリティを明確にしたことで、自分の好奇心に正直に、より多くの時間を費やせることをありがたく感じています。また、その意思表示をしたことで、小児科の先輩方にも私の思いが間接的に伝わり、以降の勤務先や役割も徐々に定まっていきました。

実際、2023〜2024年には、従来の急性期病院とは異なり、重症心身障害や神経発達症の子どもたちとそのご家族を支援する旭川療育センターで勤務する機会をいただきました。
ここでは、子どもが将来社会人として生活していくうえで、身体だけでなく心の健康も非常に大切であること、そしてそれを支える方法論についても視野を広げることができました。
また、診断や治療にとどまらず、多職種と連携しながら家庭全体を支援していくことの重要性を実感し、医療の限界と、小児科医としての役割を再認識する貴重な経験となりました。
2025年4月からは当院の神経グループとして勤務を開始し、これまでの経験を活かして発達外来を担当しています。
研究面では、GLUT1欠損症の治療薬開発にも関わらせていただく機会をいただき、充実した日々を過ごしています。

 

Q3: 小児科、小児神経の魅力

医師としての経験を重ねる中で強く意識するようになったのは、社会には様々な観点から「多数派(マジョリティ)」と「少数派(マイノリティ)」が存在し、無意識のうちに多数派が少数派にとって不利な環境を作ってしまうことがある、という現実です。

疾患や発達特性をもつ子どもたちは、それぞれの特性によってマイノリティとされる場面が多くあります。
さらに、小児は成長の過程にあり、身体や心が日々変化していくなかで、疾患そのものによる困難や、環境とのミスマッチによる困難に直面します。

そのような子どもたちが、自信を持って成長し、社会参加していくためのサポートができることこそ、小児科の大きな魅力だと私は思っています。

 

Q4: 後輩へのメッセージ

論語にある『知好楽』という言葉をご存じでしょうか。
「知っているだけの人は、好きな人にはかなわない。好きな人も、楽しんでいる人にはかなわない」という意味です。

「楽しむ力」は、人間ならではの能力であり、人工知能には真似できない特性です。
子どもたちは置かれた環境のなかで、驚くほど真剣に、そして楽しみながら遊んでいます。
それに勝るものはありません。

医師という職業において「楽しむ」というのは不謹慎に聞こえるかもしれませんが、私は真剣に、そして楽しみながら働くことこそが、自分の力を最大限に発揮し、成長し、ひいては患者さんの力になる道だと信じています。

もし皆さんが、自分の内側から「小児科、なんだか楽しそうだ」と感じたなら、ぜひ一緒にこの道を歩んでいきましょう。