第6回 北海道小児健康フォーラム

さて、「北海道小児健康フォーラム」も、今回で第六回を迎えることになりました。
お蔭様で毎回多数の方々にご参加いただき、ますます地域に根ざした活動として定着してきたと考えております。つきましては、第六回の開催内容が決まりましたので、皆様にご連絡及び参加をお願いしたいと存じます。

尚、本年より年一回の開催に変更させて頂きます。

今回は、
講演1:「こんなときどうすればいいの? 子供の救急基礎知識」と、
講演2:「今、子どもの眠りが危ない!-子どもがかかえる睡眠の問題-」の二演題です。

講演1は、救急医学講座 助手 津田尚也が担当致します。
元気に遊んでいた子供が突然熱を出したり、けがをしたりして、まわりのみんなを慌てさせることがあります。子供は自分の容態をうまく訴えることができません。そんなときどうすればよいかを知っておくことが大切です。皆様に心得て欲しい子供の救急疾患や手当について、特に子供に起きやすい症状とそれに対する処置をまとめました。備えあれば憂いなし。家庭生活や学校生活における救急対応について学んでいただけると思います。

講演2は、小児科学講座 講師 田中肇が担当致します。
睡眠は脳により作られ、脳の機能を如実に反映する大切な生理機能です。「毎日眠れず疲れる」「いつも眠くて仕事にならない」など、昔から人間にとって睡眠の悩みは尽きませんが,近年睡眠の問題は大人の専売特許ではなくなってきています。深夜まで放映されている刺激的なテレビ番組,夜遅くにコンビニでたむろする子どもたち、最近子どもの睡眠に起こってきた異変は夜型化が進む日本のライフスタイルの変化と無縁ではありません。
今回は,子どもがかかえる睡眠の問題、ならびに私たち大人がこれに対して今後取り組むべき課題や展望につきお話しします。
参加費は無料でございます。多くの方々のご来場を頂きたいと思います。

北海道小児先進医療研究会
(旭川医科大学小児科学講座)
藤枝 憲二

 

講演1 「こんなときどうすればいいの?子供の救急基礎知識」

旭川医科大学 :  津田 尚也

小児は単に成人を小さくしたものでないことはよく言われます。救急の場においては、これらの小児の特徴が一般外来以上に顕著に見られることが多いのが事実です。このことより、小児の救急の診療や問題点を考えるに際しては小児の病態の特殊性をよく理解しておくことが必要です。

小児疾患の特徴の主なものをあげてみますと、

(1) 病状が急変しやすく、経過が早い。多くの組織は発達段階にあり、機能的に未熟であり、対応予備能力が少なく、成人ではたいしたことがなくても、年少児では容易に重症へと変化する。

(2) 年少児の多くは、成人と異なり自身の症状について、直接、言葉で訴えられないことより診断が遅れてしまうことがある。

(3) 感染に対する抵抗力が弱く、多くの感染症に罹患しやすい。

(4) 軽微な症状が重症な疾患の初期症状であったり、非典型的な推移をきたすことがある。

(5) 新生児期、乳児期、学童期など、年齢により発症する疾患に特徴がある。

(6) 季節性や地域における感染症の流行がある。

(7) 同一の症状がみられてもそれを発現させる疾患は多様である。

(8) 核家族が多く、家人より適切なアドバイスを受けられないことや、断片的で不正確な知識により不安をつのらせるご両親が多い。

以上が小児疾患の大まかな特徴ですが、お子さんの病気の第一発見者はお家の人です。病気を早く発見するために、お父さん、お母さんはお子さんからのわずかなサインも見逃さないように、よく観察する習慣をつけましょう。

 

講演2 「 子どもがかかえる睡眠の問題について 」

旭川医科大学小児科 :  田中 肇

睡眠は脳により作られ、脳の機能を如実に反映する大切な生理機能である。近年睡眠の問題は大人の専売特許ではなくなってきており、このことは夜型化が進む日本のライフスタイルの変化と無縁ではないと思われる。以下に子どもがかかえる睡眠の問題、ならびに取り組むべき対策や意義につき示す。

1.睡眠について

睡眠を制御する神経系は視床下部と脳幹に存在する。さらに視床下部に存在する視交叉上核が生物時計として働き、睡眠覚醒リズムを調節する役割を担っている。しかしこのリズムは独自に働くと地球の24時間リズムに合わず、光がこれを同調させる極めて重要な因子となっている。生後間もない赤ちゃんは睡眠のリズムが一定していないが、生後4ヶ月頃より、夜は睡眠、昼は覚醒というサーカディアンリズムの基礎が確立していく。

2.小児の睡眠関連疾患

乳幼児期の睡眠の問題で頻度の高いものに夜泣きがある。器質的疾患の存在はまず否定しなくてはならないが、夜泣きであれば年齢とともに改善するものであることをふまえ、養育者の苦労に理解を示しながら精神的な安定をはかってあげることを目標にしたい。学童期の問題として注意すべきものに睡眠時無呼吸症候群がある。小児の場合必ずしも肥満はなく、眠気よりも落ち着きのなさや学習の問題が前面に出ると睡眠時無呼吸に気づきにくい場合がある。日中の強い眠気は睡眠時無呼吸の他、ナルコレプシーという疾患の場合もある。基礎疾患のある眠気を怠惰と決めつけないよう注意が必要である。

3.遅寝と睡眠不足

東京都練馬区の調査では1歳半の児の平均就床時間が午後9時38分であった。同じ調査で就床時間が遅いほど実は総睡眠時間も短いことが示されている。睡眠不足症候群は昼間の過眠に加えて攻撃性、注意・集中力の低下、意欲の低下につながる。睡眠時間の減少が血圧、耐糖能、免疫機能、さらには脳機能にまで影響を与えるという医学的データが示されている。「充分な睡眠をとる」という一見簡単な治療が今の子どもには難しいのである。

4.睡眠の問題への対策と意義

睡眠の問題へのアプローチで大切なこととしては、光環境(明暗環境)に配慮すること、日中の活動レベルを向上させること、食事など睡眠以外の生活リズムも整えること、などが挙げられる。しかし最も重要なことは、子どもの睡眠の問題が脳の成熟や身体・精神発達に多大な影響を与えるということを、我々大人たちがしっかりと認識することである。