何やってんの?

「秋深き 隣は何を する人ぞ」

というのは松尾芭蕉の有名な句ですが、

こちら、私の隣の席の田中先生。ある朝大きな紙袋を抱えて出勤してきました。で、何やってるかというと、参加した研究会の帰りに買ってきた大量のお土産の配布先の確認でした。いつも最低限、そしてなるべく軽くてかさばらず、しかも自分が食べたいものしかお土産に買わない私は、そんなにたくさん何買ったの?と驚きます。田中先生の隣人である長森先生も中身が気になっているご様子。

そんな長森先生は、栗澤先生に実験の指導をしながらも、スマホカメラを向けた私のことが気になって仕方ないようです。真剣に手を動かしているところに、「何やってんの?」と気安く声をかけた私をお許し下さい。

そしてこちらは、私の後ろの席に座る鈴木先生。「何やってんの?」と気安く声をかけられない雰囲気を醸し出しています。この1か月で4つの学会発表をこなし、他にも色々仕事を抱えている鈴木先生。カタカタカタカタ…とリズミカルにキーボードを叩く音が止まったと思うと、「あー!」という声が聞こえ、そしてカタカタカタカタ…という音が再開したと思うと、今度は「はぁー」という吐息が聞こえ、なんだか大変そうです…。

さて隣人達はこうやって忙しい日々を送っているようですが、かく言う私が当直明けのある日にやってたことはというと…、

過ぎゆく秋の景色を惜しみつつ、ついでに独り言ネタを探しつつ、スマホ片手に大学構内をうろつきながら、時々立ち止まったりしゃがみ込んだり、時には窓から少し身を乗り出したりして、怪しく写真を撮りまくっていたのでした。

こちらは中央玄関裏口の道路脇。落ち葉が木々の足元を覆い尽くし、黄色い絨毯のようです。まさに晩秋の眺め。

エゾヤマザクラの紅葉も半分ぐらいは落ちてしまったでしょうか。赤い絨毯も完成間近ですね。

この日は時々小雨が降る生憎の空模様。冷たい風も吹いて、写真を撮っている最中にもパラパラと落ち葉が舞っていました。
「ああ、もう秋も終わりか…」と感慨に耽る私でしたが、通りすがりの大学職員さんの視線を感じ、ふと我に帰ります。天気が悪い中、傘さしてスマホ片手に空を見上げ、物憂げな表情を浮かべる私を見て、きっと「この人、何やってんの?」って思ったでしょうね。
でも、別に深刻な悩み事を抱えている訳ではなく、もちろん悪いことを企んでいる訳でもなく、

分かりますか?晩秋の空に舞う、多くの虫達。ちょっと写真では見えづらいですが、飛び交っていたのは北国の冬の使者、雪虫。終わりゆく秋の景色と同時に、私はこれから始まろうとしている冬の景色も眺めていたのでした。

雪虫は、飛び交う姿がまるで舞っている雪のように見え、それが呼び名の由来になっているとのこと。

こちら、私の車に迷い込んできた雪虫2匹。この白い綿毛が、飛ぶと雪のように見えるんですね。そして雪虫を見かけたということは、あと数週間で雪が降るということ。本格的な冬の到来もあと少しですね。ああ、一年が過ぎるのが本当に早い。

ということで、秋も終わろうとしているのに思うように仕事が進まず、「今年も何やってんの?」って感じの私。

隣人達が何やってんのか気にして見ている場合ではなく、ちゃんと自分のやるべきことを見つめなければと思うのでした。